投稿日 2026.04.20
障がい福祉事業所のバリュエーション(企業価値算定)の仕組み
障がい福祉事業のM&Aにおいて、譲渡価格がどのように決まるのかを理解することは、納得感のある取引を行うための第一歩です。一般企業の評価と基本は同じですが、障がい福祉特有の「制度」や「報酬体系」が価格に大きく影響します。
1. 基本となる「年買法(時価純資産+営業権)」
中小規模の障がい福祉事業所の評価で最も一般的に使われるのが「年買法」です。
$$譲渡価格 = 時価純資産 + 営業権(実質利益 \times 数年分)$$
- 時価純資産: 会社の資産(現預金、車両、設備など)から負債を引いた実質的な価値です。
- 営業権(のれん): その事業所が将来生み出すであろう利益への期待値です。障がい福祉の場合、一般的に実質利益の2年〜5年分程度が相場となります。
2. 評価を左右する「障がい福祉特有」のポイント
計算式はシンプルですが、以下の要素によって「数年分」の倍率が大きく変動します。
- 定員充足率(稼働率):放課後等デイサービスや就労継続支援において、常に定員がいっぱいで待機者がいる状態であれば、将来の収益見通しが立ちやすいため、評価は高まります。
- 人員配置と専門性:児童発達支援管理責任者(児発管)やサービス管理責任者(サビ管)が安定して定着しているか、また「専門校配加算」などの上位加算を取得できているかは、収益力に直結するため重要な査定ポイントです。
- 個別支援計画とコンプライアンス:障がい福祉は実地指導が厳格です。個別支援計画の未作成や、人員欠如による報酬の返還リスク(隠れ負債)があると判断されれば、評価額から大幅に減額される可能性があります。
3. 種別による価値の違い
同じ障がい福祉でも、種別によって「のれん」の付き方が異なります。
- グループホーム: 建物が賃貸か所有か、また夜間支援体制の有無によって安定性が評価されます。
- 就労支援(A型・B型): 生産活動の収益性や、一般就労への移行実績という「質」の部分がブランド価値として評価されます。
- 放課後等デイサービス: 近年の報酬改定により、提供する支援内容の専門性がより厳しく価格に反映されるようになっています。
まとめ:価値を高めるために
バリュエーションは単なる算数ではありません。日頃から記録を整え、適切な加算を取得し、スタッフが安心して働ける環境を維持していること自体が、最終的な譲渡価格(のれん代)を押し上げる最大の要因となります。